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■第73話 消えたビデオ画像とレーダー記録!?

 002年5月の「瀋陽事件」は、様々な意味で“日本の体質”が暴露した事件だった。

 その日、中国の瀋陽にある「日本領事館」に、北朝鮮の脱北者5人が駆け込み、領事館の敷地内に逃げ込んだにもかかわらず、入ってきた中国の衛兵によって外に引きずり出されてしまう。その様子を撮影したNGOの映像が世界に流れたため、それを見た日本人の衝撃は大きかった。

 大使館と公使館はウィーン条約」第31条2項による「治外法権」で、その国の警察が立ち入ることはできない。領事館もそれに準ずることになるが、瀋陽事件では中国の衛兵はやすやすと敷地内に入り込み、建物内のビザ発給の待合室にまで入って、脱北者2人を領事館の敷地から引きずり出している。

 この映像が無かったら、日本領事館はいくらでも話を誤魔化せたが、泣き叫ぶ子供の映像が流出したため、世界より日本国内で大騒ぎになってしまった。

 そこに映っていたのは、中国の衛兵が落とした帽子を、優しく拾ってやる領事館員の姿で、中国側の侵入に抵抗する様子は全く見えない。その腰抜けぶりが日本で強い怒りを買い、日本政府と外務省は対応を余儀なくされる。

 そこで領事館があわててしたことは、ビザ発給所の天上付近で撮影している監視ビデオ映像の“削除”だった

 証拠の“隠滅”である。これが出れば、日本と中国と北朝鮮が脱北者の対応で手を組んでいることがバレてしまう。

 あの領事館駆け込みに中国政府が直接命令を下す余裕など皆無だったし、映像を見るかぎり、3人の領事館員は脱北者の駆け込みに協力する気は毛頭なく、かえって迷惑がっている。

 つまり、日本の外務省としては、その類は中国の衛兵に排除してもらいたがっていたということで、後に中国側が「日本総領事館の安全確保の為にとった措置で、ウィーン条約違反でない」と反論した後、「館員の同意を得たし、感謝の言葉も聞いた」と発言しているのはそのためだ。

 浅利一等書記官が「日本政府は脱北者たちの身柄引渡と当時の状況に対する中国側の説明を強く求めている」というのは、本当は詭弁で、外交上の演出に過ぎない。

 中国は、北朝鮮難民を救援する各国NGO(特にRENK)を目の敵にしている。脱北者が外国大使館や領事館に駆け込む度に、北朝鮮に協力的な中国の印象が悪くなるからだ。

 北朝鮮も、“世界一の楽園”と称してきただけに面子を潰され、人権無視政策が世界の非難を受けるため、様々な妨害工作を行い、時には嘘の情報を中国の各国大使館や領事館に流して混乱させている。

 日本は、難民を受け入れたくないという“本音”があり、暗黙的に中国、北朝鮮、日本のトライアングル関係を維持してきた経緯がある

 それが、あの映像で暴露されてしまったのだ。

 問題があるとすれば、領事館が行った映像記録の“隠蔽”だ。

 これは、今回のイージス艦「あたご」の漁船衝突事故におけるレーダー記録が無かったとする、自衛隊のコメントにも通じるものがあり、役人の隠蔽体質が戦時中と全く変わらないことを示唆するに十分である。

 航海中の情報は、すべて残さねばならないイージス艦に、航海レーダーの記録だけが無いわけがない。あれは嘘である。

 イージス艦は軍事情報が全てで、たとえ安全海域を航海中でも、何があるか分からない以上、データの蓄積は必須になっている。それが無いというのは“隠蔽”、または“削除”したということである。

 なぜそうしたか…そんな証拠があっては、艦長航海長にとって都合が悪いからだ。

 外交に裏表があるのは仕方がないとしても、日本の場合は、高級官僚やエリート自衛官の“自己保身”が目的なため非常に“セコイ”のだ。見苦しいといってもいい。

 この甘さをマスコミと国民が容認しつづけるなら、最後には、戦中の「大本営」のように、捏造と隠蔽なら何でもやる体質を、防衛省と官僚どもに根付かせる羽目に陥る。

 というか、もはやすでに手遅れの感もあるのだが。

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