2011年5月1日、アルカイダ(アルカイーダ)の中核だったオサマ・ビンラディン(ビンラーディン)が死亡したことをアメリカ政府が正式に公開し、オバマ大統領もその成果を会見で発表した。
ビンラディンはパキスタンの首都イスラマバード近郊に潜伏していたが、密かに行方を探していたアメリカ諜報機関がヘリで急襲し、地上戦の中ビンラディンを殺害したとした。遺体は確認の後、アルカイダの遺体奪還を防ぐために海に捨てられたという。
このニュースが日本で好意的に受け取られたのは、経済が持ち直す切っ掛けになる、株価が1万円台に戻ったからだが、こんな現象は一時的で、単なるカンフル剤に過ぎない。
それより、欧米を中心に盛り上がっているのが「対テロ戦争終結」の安堵感で、テロの象徴だったビンラディンの死亡により、「911」の復讐も終わったとする声である。が、それも一時的なものとする意見もある。
対テロ戦争は「民主主義VSテロ」としているが果たしてそうなのか?
実は対テロ戦争は方便に過ぎず、実態は、ブッシュ・ジュニアが「十字軍」と口を滑らせたように、「キリスト教VSイスラム教」の「宗教戦争」なのである!!
その証拠に、イスラム教の国々でビンラディンの人気は高く、アメリカでブッシュジュニアへの支持が凋落したにも関わらず、ビンラデンへの信頼は全く変わっていなかった。
調査でも、ビンラデンを最も信頼する国民が、パレスチナ人、ヨルダン人、モロッコ人で50パーセントを超えている。その次がインドネシア人、パキスタン人、ナイジェリア人で、1億人をこえる人口の3~5割が、ビンラデンを支持してきた以上、一部の過激派の行動だけで見過ごすわけにはいかないだろう。
ビンラディン暗殺の最大の謎は、なぜそれが“今”だったかということである。
筆者が前から指摘するように、今、中東でアメリカが裏から糸を引く「疑似民主化運動」が巻き起こり、サウジアラビアまで燃え広がっている。その一帯はイラク同様、少数派のイスラム教徒が多数派のイスラム教徒を牛耳り、一つまみの国王が大多数の民衆を支配する構造で、民主化されてもまともな議会政治など到底できない有様にある。
結果どうなるか、必ず単純な原理主義が台頭し、あっという間に中東全域に拡大することになる。
困ったときの「原理復興運動」である。
日本でも、外圧でもだえ苦しんでいた幕末の頃、「神道復興運動」が巻き起こり、古神道(その頃に生まれた造語)への復帰が叫ばれた。民衆の間でも「ええやないか」で伊勢参りが過熱し、その勢いが明治新政府へ引き継がれ、神道の要である天皇を「現人神」にする強力な中央集権国家の道を開いた。
そこでビンラディン殺害時期を考えると、アメリカが仕掛ける「イスラム原理主義台頭作戦」と見事に附合してくる。
下手な筋書きよりも単純で、単純であるが故に実態が見えない。その単純さがイスラム諸国に不可欠で、民衆の隅々まで原理主義が台頭するには、単純さが最も相応しいのである。
要はこういうことだ、ビンラディン殺害でアルカイダが弱体化するのは甘い見方で、衰退したアルカイダを中東全域で燃え広がる原理主義運動が助けるよう、アメリカが故意に仕掛けたということだ。
その時期が来るまで、アメリカはビンラディンを泳がせていたとみる方が正しく、今、“最も効果的な時期”にそれを決行したということだ。
同じことは、かつてイラクのフセイン大統領にも仕掛けられ、イラクを皮切りにイスラム教への“聖戦”を宣言したブッシュ・ジュニアにとって、フセインを悪役に仕立てることは容易だった。
実際、イスラム諸国全域に火をつける切っ掛けになった「イラク戦争」の大義名分だった大量殺害兵器は、最初から存在していなかった。
“放火魔アメリカ”は、戦争を起こす絶好の駒になる時期まで、その人間を生かし続ける。
ところで、ビンラディンとブッシュ・ジュニアは共に原理主義者である。特にブッシュが所属する「WASP/ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント」や「スカール&ボーズ」等は、「世界統一戦争」を主張するFundamentalismと見られ、イスラム教への宣戦布告が、己の信仰が試されるのに不可避とされている。
一方のビンラディンも、キリスト教との最終戦争を不可避とする原理主義者で、ある時点で両者は、それぞれの主張を一致させる不可解な協力関係を結んだ可能性がある。
事実、911直後、ブッシュジュニアが最初にしたことは、アメリカ国内にいたビンラディンの一族を、VIP待遇でアメリカから逃がしたことだった。ということは、それぞれの預言を成就させるため、裏でガッシリ手を組んでいたと見るべきである。
そうなると、今回、賞味期限が切れる寸前だったビンラディンを、最高のタイミングで消したことになる。

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